ITスクール、システム・インテグレーション、人材コンサルティング、Webマーケティングを中心に、セキュリティ・ソリューション、広告事業なども手掛ける株式会社エスアイイー(以下、SIE)。この会社が、どんな今を、どんな未来を見据えているのか?!社員の「目」を通じて紹介する。初回の「目」は、メディアインテグレーション事業部・部長の窪田匡知。

映像、WEB、印刷物、ノベルティーグッズ、依頼されたものはなんだって作る。

窪田が部長を務めるメディアインテグレーション事業部は、大まかに分けると2つの側面を持っている。1つは、SIE全体の広報物をはじめ、クリエイティブ関係の制作をする「インハウスの事業」を手掛ける側面、もう1つは、クライアントからクリエイティブな案件を受託制作する「制作プロダクション」としての側面となる。「インハウス=社内」の作業のみだと、最先端の表現、クリエイティブな面が陳腐化するので、ちゃんと外部のお客様からクリエイティブな案件を頂き、いい物を作り、そこで得たノウハウ・技術・表現方法を社内に持ち込んで、全体をパワーアップさせるような「循環」を考えていると語る窪田。現在、もっとも依頼が多いのが「映像コンテンツ」の制作だそうだ。

アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」をご存じだろうか?! コミュニケーションに必要な3大要素は「視覚情報(Visual)」、「聴覚情報(Vocal)」、「言語情報(Verbal)」。このうちのどれか1つでも一致しない場合には、視覚情報>聴覚情報>言語情報の順番に優先されるというのがメラビアンが示した「3Vの法則」である。視覚情報と言語情報がメインであるのが印刷物やWebサイトだが、一説によると、これに聴覚情報も加わった「ムービー」は、1分間の映像で、印刷物の180万語、Webサイトの3500ページに相当する情報伝達力があるといわれている。

インターネットの発達やYouTubeなどで映像コンテンツが見られる環境が整ったことで、企業の多くが広告に映像を使用するようになり、TV CM、Web CMなどの制作依頼がメディアインテグレーション事業部にも多く寄せられている。同時に、イベントで使用する映像などの依頼も増加し、時にはタレントの起用なども行い、より感情に強く訴えかける映像作品の制作を行っている。

クライアント、発注者、スタッフ、関わる全員と真剣に話し合う。

Q:仕事をするうえで意識していることは?

窪田: 僕らのチームの特徴として、クライアントと直接やりとりすることが多い。彼らは当然自分たち(クライアント側)が作りたいものには思い入れが強い。でもやりたいこと言いたいことを全てをやれば、伝わるものができるというわけではない。最初の段階から、「それを伝えたいなら、こんな方法がある」、「それを表現したいなら、こんな見せ方がある」など、積極的にアドバイスするようにしている。

そういう存在を目指していかないと、その先にあるのは、価格競争。「安かろう悪かろう」で戦っても底なし沼にはまるだけ。自分たちはこれまでしっかり、一件ごとに心を込めてやってきた自信があるので、「こういう時にはこうだ」と、しっかり伝え、その知見でお客さんを上回り、「などほどね」と言わせた時にできる信頼関係はとても強固なものとなる。信じてもらえる力、プロとして主張することも、クライアントとの関係では重要なこと。

Q:各プロジェクトにおける自身の役割は?

窪田:デザインは自分でやりたい。それ以外の部分は専門家に任せればいいと思っている。たとえば映像制作では、自分より優れた人間が部下にいるので、絵コンテまで書き、そこから先はまかせる。最終的にいいものができれば、それは自分が手掛けた作品ととらえるようにしている。クライアントや見てくれるお客さんが「クオリティが高い」と思ってもらえるなら、自分が主役である必要はない。

「営業」的な活動もある。いいものを作ってお客さんに喜んでもらうと、そこから別のお客さんを紹介してもらえる、そんなことも多い。1つ1つの案件に対して、費用対効果、作りたいものが正しいかというジャッジ、そういうことを丁寧にやることが「次の仕事」につながる。

案件ごとにメインとなる商材や担当する立場は異なるが、基本的にクライアントとの関わり方はいつも変わらない。制作物が、「誰に、なにを、どう伝えるのか。どんなシチュエーションで活用されるのか」、そこをコアとして考え、あとはクライアントと丁寧に話す。打合せの場で知らない用語が出てくれば、商談をしながらその場で調べる。打合せが終了し自宅で案を練る、そんな時にでも疑問に思うことが出てくれば、即担当者に連絡をする。以前、某メーカーからの案件で4社でのコンペの末に受注したときに、「なぜうちに決めてくれたのか?」と問うと、「一番質問をしてくれたから」、そんな答えをもらったこともあるという。クライアントと真正面から向かい合い、時にはアドバイスをし、アドバイスをされ、そんなやりとりをしながら信頼関係を築いていく、それが「窪田流クライアントとの付き合い方」。

デザインとの出会いは「挫折」がきっかけ

大学でデザインを学んだという窪田だが、そもそもデザインとの出会いはどんなものだったのか?!

静岡県清水市で生まれ、小学・中学時代とサッカーに親しみ、その才能を発揮。元々の身体能力の高さを活かし、中学3年生の頃には、静岡県が選抜するトレセンに所属したこともあった。(トレセン=サッカーにおける個の育成を目的としたシステム。地区 ⇒ 都道府県 ⇒ 地域 ⇒ 全国と、カテゴリー分けされており、個々のレベルに合った環境でトレーニングすることができる)高校は、サッカーの名門静岡県立清水東高校に入学。そこでもサッカーを続け、チームは全国大会なども経験するが、その頃になると「試合には出れない」という状況が続く。努力しなくてもどうにかなってきたこれまでとは違い、周囲にいるのはサッカー王国の名門校に全国から集まったエリート達。3年生になり引退を決意するも、サッカー漬けだった高校生活・・・当然受験に対応できるような勉強はしてきていない。そんな時、親戚から美大専門の予備校があると聞き、「1日中絵を描いていればいいなら」と美大を目指すことに。ただ窪田曰く、「この頃は一番人生を舐めていた。」

窪田はここで「人生初の挫折」を味わうことになる。もともと「勉強をするくらいなら・・・」という理由で選んだ「絵を描く」こと。そんなネガティブな動機に、絵をさえ描いていればという甘えが加われば、当然受かる大学などはなく、受験1年目は全滅という結果に終わる。

世の中には、血ヘドを吐くまで頑張らないとどうにもならないことがあると、この時に初めて知った。

それからは、朝9時から夜9時までデッサンの勉強。さらに帰宅してから学科の勉強。そんな1年間を過ごし、武蔵野美術大学造形学部に合格、ようやく「Deepなデザインの世界の入り口」に立つ。その後は、大学で基礎デザインを学び、卒業後は代理店勤務などを経て、2012年にSIEに入社。予備校時代からそろそろ30年デザインに触れてきた窪田だが、それでもまだ一言で「これだ!」というところには至っていないという。

常に変化、進化を続けるデザインの世界で仕事をしていく上で重要なのは「インプット」だという窪田。この世にあるものすべてがデザインであり、どんな形のモノが使われているか、どんな組み合わせで使われているかなど、日常においてもデザイナーとしての視線でモノゴトを見ている。中でも最近参考にしているのが「テレビアニメのオープニング映像」。現在のアニメ界にはTOPクリエイターが集まっており、新感覚なデザインが施された映像が多く、刺激になるという。そんな形で日々自身の中にインプットされる「デザインの素」が、様々なコンテンツを生み出すときの重要な要素となり、数々の作品が彼の手によって生まれてきた。

窪田が考えるクリエイティブとは、「個人的な意見だが、自尊心。いっぱいかっこいいモノをみて、いつかそれを超えてやる!と思うのは自然的な生理現象。それに忠実でありたい。それが結果的にクリエイティブ力につながると思っている。」という。では「デザイン」についてはどのように考えているのか?!

「一言でいうと、コミュニケーション。ある事象を人々に伝えるとき、その事象は冊子、パンフレット、そして映像コンテンツなどに姿を変える。どんな距離にいる人にどのように伝えるのか。伝えたい人との距離に合わせて情報加工する、その手段としてデザインが必要となる。人との距離を解決するモノ、つまり、コミュニケーション手段の1つであると考えている。」

そんな考えの元で生まれた最近のお気に入りの作品は、某学生服を扱う会社の創立記念イベントで使用されたオープニング・ムービー。出演したのは、この会社が制服を卸している中学校の吹奏楽部の生徒たち。コロナ禍でコンテストなどの場が減り、鬱憤がたまっている子供たちに、思いっきりブラスバンドを演奏してもらい、祝祭感を盛り上げてもらうという企画だ。困難な時代にあっても、自分たちの仕事が子供たちをこんなにも輝かせるんだと、クライアントの社内では涙を流す人が大勢いたという。

SIEは・・・熱量がすごい会社。

Q:SIE・・・入社してみて、どんな会社でしたか?

窪田:最初はすごく大変だった。 本社の中でクリエイティブな部分を任され、「新しいこと」をやっていこうという熱量がすごかった。学びながらアウトプットする毎日。それでも食らいついて・・・この12年間、あっという間だった。

Q:食らいついてきた結果、現在ではメディアインテグレーション事業部をまとめる立場にありますが、自分のチームにはどんなコトを求めている?

窪田:ひとくちにクリエイターといっても、その在り方にはいろんなパターンがある。誰もがいい「作品」を作りたいというわけではない。僕は若い頃は、自分より「いいモノ」を作れるヤツが大嫌いだった。クリエイターってそういう嫉妬深い人種が多い。でもそんな弱肉強食な世界で生き延びていける人ばかりではない。そればかりが集まると、組織としては安定稼働ができない。モノづくりに必要とされる能力は多岐にわたっているので、それぞれが自分に合った役割を、自分で見つけてくれればいい。その辺を意識しながら自分のチームを作っていきたい、という前提がある。本心では、無理なく自分ができることを長く続けてもらいたいというのを一番に思っている。

メンバーによく言うのは、何らかのポイントで、クライアントより秀でる、ということ。1つのプロジェクトを進めていく上で問題が起こった場合、「どうしましょう、どうしましょう」とまごついてはいられない。具体的な対策を出せてこそお客さんはついてくる。自分が好きな分野を生かすにしても、その分野にお客さんを触れさせ、説得させることができるぐらい、秀でてもらいたいと思っている。ただそれは1つだけ持っていればいい。それ以外のところは人に頼ればいい話。

Q:入社前にしておくことは、考えること。

メディアインテグレーション事業部部長と同時に、SIEの執行役員も務めている窪田。将来的にはSIEを、「頑張らなくても居場所が作れる会社」にしたいという。「そもそも頑張っていない人なんていない。その上で「頑張れ」とプレッシャーをかけられて、もつのか?それよりも、自分が求められ、応えられ、喜んでもらえ、自分もよかったと思える、それが自然体でできれば、無理をしなくてもやりがいが得られ、報酬が得られる。そんな会社を目指したい。」

これから社会に出る人たちが、「どんなことを勉強してくるといい?」と聞くと、真っ先に出てきたのが「考えること」。考えることは筋トレに似ていると窪田は言う。限界まで追い込まなきゃダメで、絞って絞って、搾りかすの1,2滴に使えるアイディアが含まれていることが10回に1回。だからこそ、普段から考えることをしてもらいたい、そうでないと絞ることもできない、とのこと。

そしてもう1つは「人脈」。大学時代に培った建設、インテリア、工業工芸、ファッション・・・様々な専門分野を持つ人々との人脈が、今現在とても役立っているといい、仕事の幅を広げてくれたり、困ったときには相談したり、手伝ってくれたり、その時にしか作ることができない「人脈」は、他に代えがたいものがあると語っている。

最後に、これからSIE入社を目指す方々にメッセージを。

「僕の事業部以外でも、天才という人は少なくて、叩き上げで上り詰めている人が多い。努力で道を切り開いていける会社。あとはITとかモノづくりに関わる事業部の人たちは、単純にいい人が多い。教え好きだったり、世話好きだったり。なので、新人だろうがそうでなかろうが、人に頼ってしまえばいいんじゃないかな。」